データサイエンティストの必須知識、「総和の記号・総乗の記号 | 数学の基礎」について解説します。
総和の記号(Σ)
定義と基本的な考え方
総和とは、特定の数の集まり(数列やデータの集合など)の全ての要素を足し合わせることです。総和を表す際には、ギリシャ文字の「Σ」が使用されます。具体的には以下のような式で表現されます。
\[
\sum_{i=1}^{n} a_i
\]
この式は、\( a_1, a_2, \ldots, a_n \) という数列の要素全てを合計することを意味します。
総和の公式や性質
総和には以下のような基本的な性質や公式があります。
- 定数倍の性質: 定数を数列の各項に掛けた場合の総和は、総和を求めてから定数を掛けるのと同じです。
\[
\sum_{i=1}^{n} ca_i = c \sum_{i=1}^{n} a_i
\] - 総和の分割: 2つの数列の総和は、それぞれの総和を足し合わせるのと同じです。
\[
\sum_{i=1}^{n} (a_i + b_i) = \sum_{i=1}^{n} a_i + \sum_{i=1}^{n} b_i
\] - 数列の変形: 数列の要素を変形しても総和の計算手順は変わりません。
\[
\sum_{i=1}^{n} (a_i + c) = \sum_{i=1}^{n} a_i + nc
\]
例題: 総和を用いた計算
問題:
数列 \( a_i = 2i \) (ただし、\( i = 1, 2, 3, \ldots, 5 \)) の総和を求めなさい。
解答:
数列を具体的に書き出すと、\( a_1 = 2, a_2 = 4, a_3 = 6, a_4 = 8, a_5 = 10 \) となります。
総和の記号を使って表すと、
\[
\sum_{i=1}^{5} 2i = 2 \times 1 + 2 \times 2 + 2 \times 3 + 2 \times 4 + 2 \times 5
\]
Pythonを使って計算すると以下のようになります。
total = sum(2*i for i in range(1, 6))
print(total)
このコードの実行結果は、数列の総和である30となります。
総乗の記号(Π)
定義と基本的な考え方
総乗とは、特定の数の集まり(数列など)の全ての要素を掛け合わせることです。総乗を表す際には、ギリシャ文字の「Π」が使用されます。具体的には以下のような式で表現されます。
\[
\prod_{i=1}^{n} a_i
\]
この式は、\( a_1, a_2, \ldots, a_n \) という数列の要素全てを掛け合わせることを意味します。
総乗の公式や性質
総乗には以下のような基本的な性質や公式があります。
- 定数倍の性質: 定数を数列の各項に掛けた場合の総乗は、総乗を求めてから定数をべき乗するのと同じです。
\[
\prod_{i=1}^{n} ca_i = c^n \prod_{i=1}^{n} a_i
\] - 総乗の分割: 2つの数列の総乗は、それぞれの総乗を掛け合わせるのと同じです。
\[
\prod_{i=1}^{n} (a_i \times b_i) = \prod_{i=1}^{n} a_i \times \prod_{i=1}^{n} b_i
\]
例題: 総乗を用いた計算
問題:
数列 \( a_i = i \) (ただし、\( i = 1, 2, 3 \)) の総乗を求めなさい。
解答:
数列を具体的に書き出すと、\( a_1 = 1, a_2 = 2, a_3 = 3 \) となります。
総乗の記号を使って表すと、
\[
\prod_{i=1}^{3} i = 1 \times 2 \times 3
\]
Pythonを使って計算すると以下のようになります。
result = 1
for i in range(1, 4):
result *= i
print(result)
このコードの実行結果は、数列の総乗である6となります。
総和と総乗の応用
数列や級数における利用例
総和と総乗は、数列や級数の計算に頻繁に使用されます。
- 算術級数:
定義: 同じ値が連続して加えられる数列。
例: \(1 + 2 + 3 + \ldots + n\)
総和: \(\frac{n(n+1)}{2}\) - 等比級数:
定義: 同じ値で連続して掛けられる数列。
例: \(a, ar, ar^2, \ldots, ar^{n-1}\)
総和 (r ≠ 1 の場合): \(\frac{a(1 – r^n)}{1 – r}\)
これらの数列や級数は、物理学や工学、経済学などさまざまな分野で出てきます。特に、金利や投資収益の計算において等比級数の知識は役立ちます。
統計学や機械学習における実際の利用例
総和と総乗は、統計学や機械学習にも重要な役割を果たします。
- 統計学:
平均、分散、標準偏差などの基本的な統計量の計算に総和の記号が使用されます。
例: データの平均 \(\mu = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i\)
ベルヌーイ試行の成功確率の最尤推定などで総乗が使われます。 - 機械学習:
コスト関数や勾配の計算、最尤推定などに総和や総乗が使用されます。
例: 線形回帰のコスト関数 \( J(\theta) = \frac{1}{2m} \sum_{i=1}^{m} (h_{\theta}(x^{(i)}) – y^{(i)})^2 \)
多クラス分類のsoftmax関数の計算にも総和が用いられます。
これらの計算は、データの特性を理解するためや、機械学習モデルの性能を最適化するために重要です。
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